〒270-0153 千葉県流山市中110 C館3F  TEL:04-7150-4355  FAX:04-7150-8878     
ホーム>今月の顔
 
 私たちの体は食べることで支えられていることは誰もが知っている自明の理です。しかしながら、私たちは食事と自分の健康管理についてどれだけ理解しているでしょうか。今回は、食事に定量化を導入して、栄養素分析を行い、栄養素の整った献立に仕上げ、実際に調理実習して楽しく試食も行うというユニークな活動を展開している
「国保健康支援室」(流山市国保年金課より水野貞子保健師へアウトソーシング)と、その活動を支援している市民団体の「健康を育てる会・流山」(上條幸雄代表)を訪問しました。
 取材は新装なった中央公民館で30名近い参加者を得て行われた調理実習の忙しい合間を縫って、国保健康支援室の水野保健師、スタッフの白鳥由果梨さん、「健康を育てる会・流山」の上條幸雄代表、サポーターの
佐藤節子さん、 高橋イツさんを中心に行いました。

 ‥‥「健康を育てる会・流山」の基本理念と設立のキッカケについてお聞かせください。
 
 生活習慣病の予防と克服のために、栄養素を整えた献立により「正しい食生活」を啓発・取得することを目的として流山市が「国保健康支援室」をスタート、水野貞子保健師を中心して「健康を支える栄養学」の学習講座を推進しました。
 1年目終了を前に福島県塩川町、三重県桑名市、宮崎県門川町等からの保健師、栄養士を始め流山市からも実体験された方達がシンポジストとなり、佐藤医師の講演とシンポジウムが開催されました。多くの参加者から「健康は自分たちでつくるものなんですね」という声があがり、更に水野保健師による事業が3年で終了予定であることを知った受講生から、「もっと勉強したい」「一人でも多くの流山市民に知らせたい」との声が湧き上がり、これを機に7年前の平成17年1月に当会を設立、市に事業継続の要望書を提出するなど運動を重ねました。幸い、市民の声として事業が認可になり、その後は「国保健康支援室」と「健康を育てる会・流山」が二人三脚で毎月精力的な活動を続け、今日に至っています。
 今では会員数も180名となり、ご夫婦で参加される方も多くなってきました。それだけ、食生活と健康に関する関心を持ち、生活習慣病を克服したいと思っている人が増えている証でしょう。写真をクリックして拡大画像にてご覧ください。

‥‥健康を支える栄養学についてご説明ください。
 
 「健康を支える栄養学」は、医師でヘルスプロモーションセンター代表である佐藤 和子氏が創設した栄養学です。医師としての長年の観察を通じて栄養素の過不足の状況と体調の悪さが密接に関係していることを発見し、健康体であるための四つの基本を掲げました。①心を定めること ②睡眠8時間を確保すること ③Each meal perfectを実践すること ④適度に体を動かすこと の4点です。(詳細はパンフレット(PDF)をご覧ください)

 この中で、③のEach meal perfectを実践するためにデジタルのはかりを活用して「栄養素の整った献立」を召し上がることを提唱しています。即ち、生活習慣病の予防と克服には「食事の定量化」を導入して、栄養素の整った献立により自主的な健康管理を行う必要があるとするものです。
 具体的には、下記5ステップを経て食事のとり方を学んで行きます。
 ①計量用のはかりを活用して、食品の重量(グラム)を分かる能力を育てる。
 ②現在の食事を食品ごとに重量(グラム)を記録して、栄養素分析をして過不足を知る
 ③各栄養素の生理的役割を知ることで、過不足の栄養素が如何に体に負担をかけていたかを納得する。
 ④「日本食品標準成分表」の食品の栄養素含有量から、どの食品をどれだけ加えれば不足成分が解消できるかを学ぶ
 ⑤栄養素の整った食事を毎食に活用できるように、献立として仕上げる

 上記を学習会や調理実習を通じて学んでいきます。調理実習は、国保健康支援室のもと佐藤医師が開発した栄養分析ソフトを使用して栄養素を整えた献立を会員が分担して考え、調理し、試食会を行っています。尚、料理は眼で楽しむものでもありますが、栄養素を整えた献立は自然と色鮮やかに見た目が綺麗で美味しく感じるようになります。

 栄養分析ソフトを使用して栄養素分析を献立の実例(鮭の塩焼き)を下記にて紹介します。
   画像をクリックして拡大画像にてご覧ください
献立表 栄養成分値 油脂分析 1食目安

‥‥「健康を育てる会・流山」の毎月の活動についてご紹介ください。
  
  【調理実習の様子:8/3】
画像をクリックし動画をご覧ください(6'10")。
 定例活動として月4回の調理実習と月1回の学習会・交流会があります。
 
 調理実習は、私たちの活動を流山全域に広めたいとの思いから、初石公民館、北部公民館、南流山センターで毎月、中央公民館、東部公民館で隔月毎に実施しています。メニューは毎月変わりますが、献立はサポーター3~4名が順番に担当し、栄養素分析を行ない試作を繰り返しながら最終的に献立表を作成します。尚出来上がった献立表と調理手順は毎月4箇所で同じ献立を調理・試食します。
 尚、サポータとは国保健康支援室の水野貞子保健師が展開する「健康を支える栄養学」を取得した方々で、現在約30名おります。
 
学習会・交流会は主に流山市民活動推進センターで実施しますが、学習会後に栄養素の整った弁当を食べながら情報交流を行っています。 また、随時開催している事業としては、年に4回の「正しい食生活」の講演会や高校・自治会での調理実習などの出前教室を行っています。
 定例活動の調理実習については、8/3(水)に中央公民館で実施した様子を動画にまとめましたのでご覧ください。
た、当会の活動に関連して国保健康支援室の水野貞子保健師は、「健康を支える栄養学」をテーマに、学習会6日間と調理実習により「正しい食生活」実践について学習する機会をシリーズ開催しています。直近では、9/1から初石公民館、10/5から生涯学習センターで行いますので、是非参加されて体系的に学んでいただければと思います。

‥‥興味あるトピックスがあればお聞かせください。

 
一つ目は、流山市の某高校の調理実習についてです。家庭科の先生が、「健康を支える栄養学」を紹介するビデオをご覧になって、1年以上かけて「正しい食生活」を実践されました。その結果、体調がよくなり仕事も余裕をもって出来るようになりました。そこで、家庭科の調理実習で栄養素の整った献立の実践を始めたいとのご要望があり、国保健康支援室の白鳥さんを中心に当会のサポーター5名が応援参加し実施しました。
 学校と地域の連携ですが、サポーターが支援する調理実習は生徒さんにとても好評でした。受講した生徒さんの中には、「生活リズムを変えてみたら体調が良くなった」「運動能力が確実にアップした」「早寝早起きとなった」と仰る方が何名も現れました。なかでもユニークだったのは、「成績が30点~40点上がり、トップクラスに入れた」との報告です。正しい食生活の実践を通じて、生活にメリハリがつき集中力が増した正のスパイラルが生じたものと思われますが、実に嬉しい報告でした。

 次に、94才になるサポーターの叔母さんの事例です。叔父を亡くして十余年、沢山の猫に囲まれて自由気儘な一人暮らしをしていましたが、最後に残った猫も亡くなって気力・体力的に限界となり、サポーターさんが家族として迎えることになりました。暮らし初めの頃は、杖が手放せず、20メートルも歩くとよろよろと「休ませて」とすがる有様でした。足もふくらはぎまで老人特有の白くカサカサのヒビが入っていました。お医者さんに相談したら、「栄養失調だから食事をしっかり摂れば治るよ」と薬も出ませんでした。長年の一人暮らしで食事も好きなものばかり食べていたので、栄養バランスが偏っていたようです。
 そこで、調理実習で学んだ「栄養素の整った献立」を朝昼晩実践し、生活も「早寝早起き」を家族で徹底しました。すると驚くべきことに、1ケ月もすると真っ白だった髪が、後ろの生え際が黒くなり始め、足もみるみるキレイに艶が出てきました。高いときは160/80位あった血圧も急激に改善し、今は薬なしで120/68位に落ち着いているとのことです。髪の毛は更に黒髪が増えグレーになり、玄関の隅に置いている杖には見向きもしなくなりました。
 食事の大切さを身をもって体験し、「正しい食生活」を心がけ実践することで病気知らずの元気で健康な生活を送ることができると分かった好事例でしょう。

‥‥飲食店とのコラボでメニュー化されたものがあると伺いましたが‥‥。

  
はい。割烹料理「柳家」さんで栄養素の整った「流山御膳」をメニューに加えていただきました。季節によって内容は変わりますが、一例としてすずきの焼き物、天ぷら、うざく、デザートなど10品目を上品な弁当箱に収めていただいています。また、キッチンとべさんは、国保健康支援室スタッフと相談しながら、学習会・交流会などで栄養素の整った弁当を作っていただいています。一例として、「さばの辛子焼き」の栄養素分析表をご覧ください。お店でいただくことも可能ですが、事前予約が必要ですので、夫々にお問い合わせください。
     
 画像をクリックして拡大画像にてご覧ください
割烹料理「柳家」 流山御膳「すずきの焼き物」 キッチンとべ 「さばの辛子焼き」

‥‥最後に今後の期待や活動計画についてご披露ください。
 
  
今後の活動ですが、「国保健康支援室」は地域密着型事業を中心に推進していきたいと思います。お蔭様を持ちまして食生活改善の取り組みに対し、流山は近隣市町村から高い評価を受けるようになりました。然しながら、生活習慣病に悩むご家庭は沢山存在します。一家に一人、「正しい食生活」で健康管理をできる人を育てるべく、出前教室や訪問指導も精力的に進めたいと思っています。また、先々は、「健康を支える栄養学」に基づいた料理をごく身近な存在として提供出来れば良いなと思います。
  そして、「健康を育てる会・流山」は、従来にも増して「国保健康支援室」との連携を強化して「正しい食生活」の啓発・普及に貢献していきたいと思っています。最近、「栄養素の整った食事」の献立に若いサポーターの方々の工夫とアイデアに基づくものが増えてきました。嬉しい限りです。子育て世代のママさんに積極的に参加いただいてご家族に必要な栄養素が整った美味しい食事を差し上げて健康な生活を送っていただければと思います。
 
‥‥最後に水野貞子保健師より皆さんに一言お願いします。

 このような保健事業は前例がなく試行錯誤の連続でした。佐藤医師の「健康を支える栄養学」の理論と実践するためのスキル(ノウハウ)を佐藤医師より直接ご指導を受けながら行える環境にあったことは私にとって幸いでした。そして、流山市のご理解と、特に「健康を育てる会・流山」の存在があり、ここまでの事業内容と継続に至ったと思います。長年求め続けてきた保健師のあるべき姿を実現させていただき、保健師冥利につきます。

【編集後記】
 取材後、調理教室参加者の皆さんと献立の食事をご馳走になりましたが、味は言うに及ばず、VTR撮影の中で白鳥さんが「栄養素を整えた献立は自然と色鮮やかに見た目が綺麗になる」と仰っていた言葉を心から納得しました。お腹も一杯にもかかわらずカロリーは660Kcalでした。尤も超メタボの小生はご飯は控えて500Kcalに抑えるべきだったとプチ反省しましたが。
 取材を通じて感じたのは、国保健康支援室と健康を育てる会・流山の見事な連携プレーです。行政の事業を市民団体が支える構図は、言うは易く行うは難しとの印象を持っていますが、今回は全く感じませんでした。水野保健師の「流山の取り組みは県内市町村から高い評価を受けている」との言葉も素直に納得できました。サポーター方式を採用し、調理実習はサポーターの方々がイニシアチブを取って運営する工夫が、お互いを認め合う雰囲気を作っているではと勝手に感じました。
 最後に提案があります。近い将来、調理実習の献立を纏めた本を発行しては如何でしょうか。かなりの数の献立が出来ていると思いますし、全てに栄養素分析を行い調理方法を説明しているのですから、貴重で人気の本になるのは間違いないと思います。(取材 : 冨岡 恒雄)
Copyright(C)2010 Nagareyama shimin katsudou Center . All Rights Reserved.